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ノエル・ヌエット

去年のいつだったか、神田明神の資料館の展覧会を見に行きました。そこで目にしたのがノエル・ヌエットの神田明神の版画です。ノエル・ヌエットという名はこの時初めて知りました。帰宅してから調べたら、当時パリにいた与謝野鉄幹、晶子夫妻と知り合ったり日本人と交流があった模様。大正時代に初来日し、その後昭和初期に再び日本へ。フランス語講師として活躍する傍らで東京の街角を描いていたそうです。「フランスの広重」という異名もあるそうですが、実際にノエル・ヌエットは広重の浮世絵が身近にある環境で育ったそうです。しかし、確かに浮世絵テイストを持っているけど良い意味で日本の浮世絵と全く異質。的確に捕らえられたであろう構図、写実で洗練された世界観と色彩、既に失われたものが多い東京の街の様子が脳裏にリアルに蘇ってきます。どの版画からも彼は本当に東京が好きだったんだろうなぁと思わされます。

資料館に飾られていた神田明神の版画。
この版画から目が離せず、画家の名前を覚えて帰ってきました?

ノエル・ヌエットのWikipedia

上で色彩について書きましたが、以前神保町のとある浮世絵のお店に行った時、オーナーさんから浮世絵の色彩について教えてもらった事があります。まず絵師から色の指定がトップの摺師に伝えられる。版元はトップの摺師に早く次の仕事に取り掛かってもらいたいので、その浮世絵はある程度の枚数が刷られると次の弟子の摺師が摺る事になる。その時に技術の違いや色の指定がうまく伝わらないなどで最初の版とは全く異質な刷り上がりとなるものがある。また、現在では復刻版が出ているけど、当時の顔料とは全く違うので全体の色彩自体が大幅に変わっているなどなど…なので版画に関しての色彩は絵師の思い通りではない場合もあるというわけですね。

版画にはこれまであまり興味がなかったのですが、上野公園に広重の浮世絵を使った灯籠が沢山飾ってあってそれで興味を持つようになりました。新版画というジャンルがあるのもつい最近知って、その中でも土屋光逸の版画に興味があります。神田明神の展覧会でノエル・ヌエットの版画を見ていなかったら今でもあんまり版画や浮世絵には興味がなかったかもしれません?

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